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50日レポートまとめ

https://docs.google.com/document/d/1tlBJ3jyvV4059U-Rm2S6I1L_p8r8Q0myl67WZLbf8sM/edit?usp=sharing

ブロイラーに生まれたメイの50日

0日齢

体重40g

メイは孵化場で産まれ、トラックで農場に運ばれた。その日に到着した雛は6万羽。農場にはいくつか鶏舎があって、その一つにメイは乱暴に放り投げられた。給水管にぶつかって地面に落とされたメイは、驚いて起き上がった。

ピヨピヨなく雛たちには何が起こったのかわからなかった。ここはどこなのだろう。ただ驚いてひとしきりオロオロしたあと、メイは食べ物と水を見つけた。彼女は急いでごはんをついばんだ。そういえば産まれてから何も食べたことがなかった。すっかり空腹だったメイは、おなかいっぱいごはんを食べ、新しいふかふかのノコクズのにおいに包まれて眠った。

1日齢

体重55g

メイたちは何かをつついてあそびたくなった。けれどまわりにはつつけるものが何もなく、地面や壁のシミをつついて過ごすしかない。ときどき農場の従業員が来て、鶏舎に座り込み、静かに作業をした。なにをしているんだろう? メイたちは動かない人間には近寄り、安心してみんなでつついた。

しかし急に人が立ち上がると、雛たちはびっくりして逃げまどった。怖い!逃げなくちゃ! 急に動くものが怖いメイたちが、ちょこまか一斉に走り回るから、ときに従業員は小さな体を踏みつぶしてしまう。踏まれた雛はお尻から内臓が飛び出し、痛くて苦しくて、羽をばたつかせて、隅のほうに這っていく。そして傷ついた内臓を引きずって死んだ。

2日齢

体重70g

体が弱りはじめる雛がいた。目を固く閉じ肩をすくめてじっとうずくまっている。快復せず具合はだんだん悪くなったが、その場に横たわっているしかない。動かないからだのまま、死ぬ寸前の人がするように、少しでも酸素を取り込もうと、口を大きくあけて荒い呼吸をくりかえした。

首がねじれてしまった雛もいた。まっすぐに首を上げられず、動くたび体が回転して食べることさえできない。それでもごはんを食べたくて何度も体を動かしたが、食べられずあきらめた。しかししばらくするとまた、体をおこして食べようとする。そのうち弱って動けなくなり、一羽ずつ死んでいった、雛は死ぬと一か所に集められ従業員が毎日処分した。

仲間が死んでいくのを見ながら、メイは今日も生きている。

3日齢

体重90g

毎日見ていても明らかにわかるほど、メイは大きくなっている。お尻もどっしりとしてきた。

でもメイの仲間の中にはまだ成長できず、とても小さい雛もいた。体が小さい雛は弱っていることが多い。でもたとえ元気でも体が小さければ殺処分されてしまう。

昼になって鶏舎の気温が上がると、雛たちの呼吸は荒くなった。メイはできるだけ涼しい場所を探して、少しでも熱を逃がそうと翼を体から離した。でも何をやっても暑さから逃れることは難しかった。鶏舎の気温が下がるまで、雛たちはただ耐えるしかない。

4日齢

体重111g

日がたつにつれメイの周りには、足が曲がって歩くこともできない先天性の障害を持つ雛が目立ってきた。

生まれつきに骨格異常が原因で、ひっくり返ると起き上がれない雛もいる。そんな雛は一度転ぶと自力では起き上がれない。従業員が気がついて雛を立ち上がらせることもあったが、またすぐにあおむけに転んでしまう。鶏舎には数万羽の雛がいるから、ひっくり返ってバタバタしていても気付いてもらえないこともある。起こしてもらえず消耗してそのまま死んでしまうこともあった。

今日も昼頃になると鶏舎の気温が上がった。メイたちはじっと暑さに耐えている。

5日齢

体重133g

鶏舎には窓がなく、毎日どこまで行っても同じ景色が続いている。メイは変わり映えしない鶏舎の中で、何か面白いもの、変わったものを見つけようあちこちつつくけれど、何もすることがないといった風に立っているだけのことも多い。

昼ごろ、気温は36度に上昇した。日が落ちても鶏舎の気温が下がらない。雛たちはみんなじっとして、口を開けて全身で呼吸をしながらしのいでいる。

足をうまく動かせない雛たちは、餌のある場所まで移動することも難しく、餌を満足に食べられない。さらに体は小さく衰弱していった。

6日齢

体重159g

昨日より気温が下がった今日、雛たちはいくらか過ごしやすそうにみえた。けれど数万羽の雛がひしめく鶏舎はところどころ暑苦しく、そこにいる雛は元気がない。

涼しい場所に移動すればよいけれど、雛たちはあまり遠くまで行こうとしない。見慣れた仲間と離れるのが不安で、いつも寄り添っていたいのだろう。

7日齢

体重187g

ここへ来てから一週間がたった。メイの体重は来た時の5倍に増えた。一羽一羽の雛が大きくなるにつれ、鶏舎は狭くなっていくが、それでもまだメイは人間の手のひらにのるほどの大きさしかなく、周囲には動き回ることのできるスペースがあった。

雛たちの糞で地面が汚れていき、最初の日にふかふかなふとんに思えた床のノコクズは少しずつ固まり始めている。サラサラの場所を探してメイたちは砂浴びをしている。

8日齢

体重218g

日増しにメイたちの体重は増えていく。体が重くなった分、起き上がれなくなったり、足が悪くなったり、歩くのが難しい雛が増えていくようだ。

長い時間転んで起き上がれないでいたた雛は、人に起こしてもらうと、羽毛が少し剥げているのがわかった。起き上がろうとして何度ももがいたのだろう。けれども起こしてもらった雛はじきにまた倒れる。倒れた時にいつも起こしてもらえるわけではない。なんといっても鶏舎の中には数万の雛がいるのだ。気づかれないことのほうが多い。起きられない雛たちは、死を待つしかない。

9日齢

体重250g

この日齢だと26度くらいが適切な温度だが、今日の気温は33度。暑そうに口呼吸している雛もいる。

メイの周りにはを伸ばしたまま曲げられない雛や、犬のようにお座りしたまま動かないヒヨコが目立つようになった。脚をハの字に大きく広げたままの雛は、つばさを使い這って地面を進む雛たち。もう少し気温が低ければ、体力を消耗せずにすんだのに。

雛たちは傷を負っても病気で苦しんでも、治療されず痛みに耐えるしかなかった。自然に怪我が治るかあるいは、弱って死ぬ日まで。

10日齢

体重288g

メイたちの体重は産まれた日の7倍になった。人間の赤ちゃんが出生して10日で、小学1年生の体重まで増加したらどんなに不自然なことか。

足の悪い雛はますます悪化し、ひっくり返った雛は人に起こしてもらってもすぐにまた転ぶ。そういう雛たちは苦しそうだ。きっと動くと体が痛むのだろう、じっとしていることが多い。

11日齢

体重327g

成長したメイたちは体が大きくなった分、たくさん糞をするようになる。そのため床は汚れて糞で固まっていく。雛たちは固くなった床では砂浴びができない。飼育エリアが広げられると、新しいノコクズが敷かれたエリアが現れる。メイたちはすぐに見つけて嬉しそうに砂浴びした。

給水器や給餌機も、雛たちの成長にあわせ少しずつ高く持ち上げられていく。それはメイにはちょうどいい高さ。しかし立てない雛や体の小さな子には高すぎて届かない。こうした弱った子たちはさらに、ごはんも食べられず水さえも飲めなくなっていくのだ。

12日齢

体重368g

人間は毎日、メイの仲間の死体を集めた。雛たちのいる群れの中に分け入って、死んだ子たちを集めて回る。メイたちは、とにかく歩き動き回る人間が怖かった。だからできるだけ走って逃げようとしたが、足の悪い雛、逃げ遅れた雛は運悪く蹴られてしまう。たくさんの雛があちこち逃げ回るので、人間にとっては踏まないで歩くことがむずかしい。蹴られて傷つく雛がまた増えていく。そうやって集められた死体を人が鶏舎の外に持っていった。

時々酷いけがをした雛がいる。そういう雛は身をかばうようにして隅のほうにいる。皮がはがれて、血が出ている。痛々しい。

13日齢

体重410g

メイは二週間で10倍以上重くなった。足も太い。この頃から普通の鶏とはまったく違う動物のように見えてくる。太い足、急激な体重増加は「品種改良」のせいだ。

大きくなれない雛もチラホラいるが、そういう雛は足が悪いことが多い。足の悪い雛は食べることができずに苦しみ、さらには足の痛みにも苦しんでいる。関節が変形し、膨張し、時に骨折する。治癒はされない。

14日齢

体重460g

今日も暑い。雛はそこかしこで口を開けて激しい呼吸を繰り返している。床はどんどん固まっていき、メイたちが砂浴びできる場所はほとんどなくなった。

外にでることができない。外の景色を見ることすらもできない。産まれてからずっと単調で変わり映えの無い鶏舎の中で過ごすメイたち、好奇心は満たされない。砂浴びは貴重な気晴らしだったが、それももうしばらくすれば全くできなくなるだろう。

15日齢

体重508g

メイたちが大きくなるにつれて、鶏舎の中は過密になってきた。右を見ても左を見ても雛でいっぱいだ。日々、スペースが無くなって混雑していくことに、メイたちは不安とストレスを感じはじめている。

途中で死んでしまわない限り、メイは35日後に肉にされるために”出荷”される。そのころには体重は3kgほどになっているはずだ。急激に太るように品種改良されてきた雛はあっと言う間に大きくなる。今の6倍もの大きさに育った出荷時には、鶏舎の中は足の踏み場もない状態になるだろう。

16日齢 

体重561g

メイたちの体重が増えるにつれて、過密になっていく。床の表面も少しずつ固まってきて、砂浴びするのが難しそうだ。

足の悪い雛たちにとってはだんだん生き延びることが難しくなってくる。雛の成長に合わせてだんだん高くなる給水器、給餌機にクチバシが届かなくなるからだ。

今は、何度も弾みをつけて飛び上がるようにして少しずつ水を飲んでいる。でもそのうち完全に届かなくなるのだろう。

17日齢

体重615g

退屈な毎日。同じ壁に囲まれ、同じ風景を見て過ごす雛たち。つつくものもなく、地面も硬くて砂浴びもできない。ヒヨコらしい好奇心を少しも満たされない雛たちは、ただエサを食べて過ごした。お腹だけは減るから、エサ場まで歩ける子は食べることで暇をつぶした。

18日齢

体重672g

メイたちの体重は、鶏舎に来たときの16倍以上になった。大きくなった分、大きな子が動かない子を踏んでしまうこともあった。しかし体が大きいからといって雛たちは健康とは限らず、体を重たそうにゆすり、ヨロヨロと足取りが不安定な子が目立つ。そして目に見えて小さな子にはただ殺される運命が待っていた。

19日齢

体重730g

首の曲がった雛は、餌を食べることも難しそうだ。翼がポキンと折れたように無くなって出血している雛は元気がなさそうだ。生まれつきクチバシが変形している雛は、もうずっと餌をちゃんと食べられておらず、そのためとても小さく、痩せている。足の悪い雛は這うようにして移動しなくてはならず、大変そうだ。

みんな、それぞれがんばって生きているけど、自分の力ではどうすることもできない。だんだん弱って、苦しそうに目を閉じてじっと耐えるしかない。

メイの見る世界は幸せなものとは言えないだろう。体がどこも変形していなくてしっかり立って歩くことができても、幼いメイたちの好奇心を満たせるものは鶏舎の中でみつけるのは簡単ではない。外には毎日景色の変わる木々や空や自然、草や虫、移動する太陽、影、胸をワクワクさせ、生きる喜びを感じることができるものがたくさんある。メイたちは一生それを見ることはない。この電気のついた薄暗い鶏舎の中がすべてだ。

20日齢

地面はメイたちの糞でどんどん固まってきている。もう地面がノコクズであったことはほとんどわからない。

メイはこのところずっと砂浴びをしていない。固い地面をひっかいて砂浴びの真似事をしている雛もいるけど、羽根はきれいにならず、気持ちも満たされない。

給水器から水漏れしているところもあり、その下の地面は靴の跡がつくくらいにぐちゃぐちゃになっている。

21日齢

体重856g

産まれたころの20倍以上に増加。例えば採卵鶏の場合、21日齢の時の体重は200gほどにすぎない(採卵鶏は早く成長するような品種改良はされていない)。ブロイラーはその4倍ものスピードで成長している。

地面があまりにドロドロになると、時々新しいノコクズが少し加えられることもある。汚れていないサラサラなノコクズがメイたちは大好きだ。新しいノコクズのところに急いで行って、地面をひっかき、体を擦り付け、体を震わせて、雛たちは一心に砂浴びをする。すごくうれしそうだ。でも、新しいノコクズはほんの少ししかない。じきにまた糞を吸って固くなり砂浴びはできなくなるだろう。それでもメイたちは夢中になって久しぶりの砂浴びを楽しんだ。

22日齢

体重920g

雛たちの成長に合わせて、給水器や給餌機の位置が高くなっていく。平均的な成長に合わせて高くするので、メイたちにとってはたまたまちょうどよいが、足が悪い雛や体の小さい雛には高すぎることがある。いまは弾みをつけて伸びあがって食べているが、おそらくそのうちまったく届かなくなるだろう。

23日齢

体重989g

もう動く気配がない雛がいる。メイたちはまだ、人が鶏舎に入って歩いてくると驚いて逃げる元気があったが、弱った雛はただじっとしている。警戒するように目を向けても、動く力が残っていないのだ。こんなに弱った雛であっても、すぐには死ねない。糞で固くなった地面にお尻をペタンとつけて立てなくなった雛は、何度も立ち上がろうともがいた。生きたい!と叫んでいるようだ。

どうしても立てなくて、食べることも飲むこともできなくなった雛たちは、長い間、飢えと渇き、湿った地面のせいでお尻と足にできる炎症で苦しんだ。

人が弱った雛を見つければ、その場で首をひねって殺すこともあった。首をひねるというこの方法は間違った方法だ。首をひねられた雛は羽根をばたつかせ、クチバシをパクパクさせて、動かなくなるまで2-3分かかった。人の手で殺されるのと、長くかかって衰弱して死ぬのと、どちらがマシなのか。

24日齢

体重1057g

くちばしが変形した雛。上下の嘴がかみあっていないため、餌をついばむことが難しい。他の雛に比べて体が小さかった。

お尻に傷を負った雛は、癒えない傷の痛みを、うずくまることでただ耐えていた。

堆積した糞が放つアンモニアで、空気まで汚れてきた。地面はところどころ大量の水分を含んでベトベトしたまま乾かない。

弱って長い間動けないまま死んでしまった雛の足の裏をみると、炎症を起こしている。この炎症は死にゆく雛に痛みを追加しただろう。怪我や飢えから赤ん坊のまま死んだ雛は、そのゆっくりした死の苦しみの間際、想像を絶する足の痛みにも苛まれたのだ。

換羽がストレスになっていることもあるのだろう、弱ってうずくまる雛もちらほらいた。メイはそういう雛たちに比べるとずいぶんマシだった。けれど暑さだけは耐え難い。気晴らしに砂浴びできる場所も見当たらない。弱った雛は死ぬことができる。しかしメイはこれから出荷までの26日間を、まだ生き続けなければならなかった。

25日齢

体重1120g

日本のブロイラーは産まれて50日で出荷される。つまり殺されるまでの時間があと半分となった。

メイたちの体重はずっと継続して増え続けている。ブロイラーのように急激に太るよう育種されていない鶏だとこの体重になるのに100日かかる。不自然な速さで成長するよう品種「改良」された雛たちは、通常の4倍ものスピードで太るから、身体が追いつかず、ある雛は歩行障害に、さらにある雛は立ち上がれなくなった。1日がすぎるごとに、そういう雛が増えていっているようだ。

26日齢

体重1190g

何のために生きていて、何のためにみんなこんなに苦しいのか?

ひっくり返っていた雛はようやく人に起こしてもらったが、長くひっくり返っていたのでハアハアと息をしている。糞まじりのジメジメした地面に接してた背中は炎症で剥げてしまった。羽根の付け根がとくに酷い。立ち上がっても足がグラグラしているから、まだすぐひっくり返ってしまうだろう。

首が90度ねじれている雛は長い間ほとんど何も食べていない。それでも首をグラグラさせたまま餌を突つこうとしている。ここには幸せな雛はいないのか?メイは歩けるし、ご飯を食べることもできるけど、死にそうに退屈だった。興味を引くものもなく、砂浴びで清潔にもなれない。ただ食べて、太るだけ。まだ赤ちゃんなのに何の福祉もない。

27日齢

体重1270g

この日、メイは地面の中から偶然、長いワラを見つけた。こんなものを見たことがなかったメイはとてつもなくうれしくて、ひとりで走り出した。こんな奇跡がなければ、「長いものであそぶ」なんて、雛たちは一生できないのだ。単調な鶏舎の中には、雛の好奇心を満たせるようなものは何も与えられなかった。しかしすごいものを見つけたメイは、今日だけ幸せだった。床には汚れたノコクズと雛たちの糞が積もっているだけで、なぜそれが紛れ込んだかわからない。メイはゆっくりと長い時間あそんだ。

雛はそんなささいな、ほんとうにちょっとした目新しいものでも与えられれば、子どもらしく喜んだ。高価なものである必要はこれっぽっちもないのに、鶏舎の中には、雛たちがあそべるものは何一つなかった。ブロイラーのエンリッチメントなど、ここの人間は気にもせず、メイたちを肉として太らせることにしか関心はなかった。

雛たちは安楽死すらもさせてもらえない運命だった。弱った雛は糞だらけの床の上で死ぬのを待つ。運が良ければ見つけられて、農場の人に殺された。もちろん麻酔はなく、よくて首の骨をいきなり外されて死ぬ。それでも雛は顔をゆがめ、クチバシをパクパクさせ、もがいて逝った。

28日齢

体重1345g

メイが生まれてから4週間たった。今の体重は生まれたころの33倍以上で1345g。ブロイラーではない鶏の場合、同じ日齢で270gなのでどれだけ急激に太らされているかがわかる。メイは今でさえ自分の重い体を持て余しているが、これから22日後にはさらに3kgもの体重になっていく。そのころのメイに、今の愛らしい面影は残っているのだろうか。

29日齢

体重1420g

メイたちのような平均的な雛の背の高さに合わせて給餌機や給水器の高さを変える。足の悪い雛や小さすぎる雛は背が届かず飲めなくなり、食べられなくなる。だから次第にやせ、脱水も酷くなっていく。そんな雛たちは痛みを我慢して、羽を使い、這って餌場に移動した。弾みをつけてなんとか、水を飲み、餌を食べようとした。自力ではどうにもならない。

足も、平均より小さいことも、自然に治ることはない。これらは「品種改良」が根本的な原因だからだ。

メイの鶏舎だけでも、餌や水を得られず苦しむ雛がどれだけいるのか、把握しきれない。そして今この瞬間に、日本全体では、あるいは世界ではどれほどのブロイラーの赤ちゃんたちが苦しんでいるのだろうか。

30日齢

体重1490g

水も飲めず餌も食べられずに死ぬということは、すなわち餓死するということ。ブロイラーとして日々太らされるメイのまわりでは、餌や水に届かなくなって餓死する雛がいた。

はじめは何度も餌や水を飲もうと首を伸ばしたり羽ばたきしたりして頑張っていた。しかし、食べられないまま、体力だけが奪われ、しだいに衰弱していった。

すぐに死ねるわけではない。目をぎゅっと閉じて、痛みにじっと耐えていた。感覚が鈍るわけではない。意識はっきりしていて周りの物音に反応して首を動かしたりする。とくに人が入ってきて歩き回ると、雛の胸の鼓動は高鳴り、逃げなければ!と全身で危険を察知する。元気な雛たちは一目散ときはその物音と気配を察知する。周りの雛は一目散に逃げる。でも、弱った雛は、どんなに怖くて逃げたくても、動くことはもうできない。

地面に接した足だけでなく体内も炎症を起こし、体中が痛く苦しい。全身に充満した耐え難い痛みと恐怖は、ふとある瞬間に楽になる。それが死だ。死ぬ瞬間に雛たちは、救われたとおもうだろうか。

31日齢

体重1570g

地面は大きくなる雛たちの糞を吸収し、日に日に汚く、固まっていった。給水管から水漏れすることもめずらしくなく、その下の地面は糞とノコクズと水が混ざってどろどろとさらに不潔になった。その付近にいる雛たちはどろどろの中で過ごさなければならなかった。あきらかに雛はそこに座ることを嫌がっている。雛はお尻が濡れるのが嫌いだし、メイたちの腹回りの羽毛は生えておらず、直接皮膚に糞が触れるからだ。まるで商品になる肉以外はどうでもよいかのように、メイたちは羽毛が薄いのだ。

清潔さをたもつための砂浴びも、もう長いことできずにいた。

32日齢

体重1646g

時々クチバシが変形した鶏がいる。変形したクチバシで餌をついばむのは難しいそうだ。遺伝的な問題を抱えている可能性もある。そのため、クチバシが変形した鶏はたいてい痩せて、とても小さい。大きくなったメイたちの群れの間で、隠れるようにたどたどしい足取りで歩いている姿を見かける。こういう雛は殺されるまでのたった50日ですら、生き延びられないこともある。水に届かなくなっていき、衰弱して死んでしまう。

今日もそんな雛が居た。口を大きく開けて、喉を見せながら、あえぐような呼吸をくり返している。まもなく死んでしまうだろう。

32日間この雛は、満足に餌を食べることもできず、どんな思いで、どんな32日間を過ごしてきたのだろうか。

33日齢

体重1727g

メイたちの体重は信じられないスピードで毎日増えていく。もはや重たい体を抱えて走ることもしんどそうだ。

ブロイラーでは足の悪い鶏が多い。歩くと痛みがひどいため、地面に座っていることも多い。そのため足の悪い鶏は糞尿で汚れた地面に触れている時間が多く、体が汚れていく。足がそれほど悪いわけではないメイの白い羽根も、少しずつ汚れて糞の色に染まってきた。

鶏舎の中はもうかなり過密だ。走り回ったりするスペースもなくなっている。過密であることは地面の汚れをより加速させていく。

34日齢

体重1800g

犬のお座りのように、お尻をペタンを床につけて座っている雛たちは立ちあがることができなくなっていた。弾みつけて立とうとしてもお尻が持ち上がらない。人に給水器のところまで持ち上げてもらうと、雛は必死で水を飲み続けた。水を長い間飲めなかったからだ。通常そんな細やかなケアは行われない。立てなくなった雛たちは、渇きに苦しみながら、誰にも気づかれず死んでいく。

羽繕いをしている雛がいる。人間と同じように、雛も自分の体を綺麗にしたいという欲求がある。鳥類にある背中の後ろのほうの尾腺から油をクチバシですくいとって、羽をつくろう。糞だらけの地面にいても、綺麗でいたいという気持ちは私たちとかわらない。でもどんなに羽繕いを繰り返してみても、糞の上で暮らす雛たちは少しずつ汚れていく。

35日齢

体重1883g

メイが生まれて5週間がたった。

体重は急スピードで増えている。ブロイラー種以外の鶏(ボリスブラウン、ジュリア)であればこの日齢の体重は370g程度。早く成長するということに重点を置いた品種改良はすごい成果をあげている。

だが太らされる本人たちからしたらどうだろうか?

骨の成長とは、まず外枠である軟骨ができ、その中に「骨」ができたあとで外枠の軟骨が細胞死する。しかし急激に成長させられる雛の場合、軟骨が異常をきたし正常な外枠ができないため骨が変形してしまうことがある。

メイの周りではこういう症状のある雛をみかける。痛みをじっと我慢しているように、あまり歩きたがらない。

36日齢

体重1960g

メイたちの体重が増えるにつれて、鶏舎の中は過密になっていく。

毎日、朝と夕方に、人が鶏舎に入って死体を集めてあるき回る。その作業中、メイたちは人を怖がって必死に逃げるようとするが、逃げる場所さえもなくなってきた。奥行きが100m近くある鶏舎、場所によっては足の踏み場もないほど過密になっているところもある。どうやってごはんを食べにいっているのかも分からないほど過密。座ることすら難しそうに、立ったままの雛がいる。雛たちにとって過酷な場所だ。

出荷まであと2週間もあり、そのころには今より1kg重くなっているはずだ。一体どこまで過密になるのだろうか。

37日齢

体重2040g

砂浴びできる場所はもうほとんどない。給水管から水が漏れて、雛の足が埋まってしまいそうなほど地面がブヨブヨになっているところもある。その周辺で生活せざるを得ない雛たちは、腹も足も尻も汚れている。

弱った雛は他の雛より体が汚いことが多い。歩くこともできず、糞の積もった不衛生な地面にずっとうずくまっているからだ。

足に障害のある雛は足の裏に炎症を起こしていることが多い。歩くと痛いため、できるだけ動かずに、糞だらけの地面に足をつけっぱなしにしているからだ。

メイも腹のあたりが汚れ、足の裏も少し炎症を起こしている。餌を食べるとき以外はあまり歩きたくて、汚い地面の上でじっとしていることが増えているからだ。

メイの体重はもう2kgを超えた。重い体を抱え、足の裏も痛く、しんどうそうにしている。それでもよく分からない食欲に駆られ、食べずにいられない。食べて、じっとして、それだけを繰り返す。

38日齢

体重2118g

餌皿の前で餌を食べたそうに上を見上げている雛。届かないのだ。
後ろ半身に麻痺が来て思うように足を動かせない。首を伸ばしても届かない。移動するときは翼を使う。羽ばたきの勢いで移動する。立とうとして足の関節を踏ん張っても、じきに後ろに倒れてしまう。そういうことをずっと繰り返し、だんだん疲れてくる。何も食べられない、飲めない。上を見上げては、なんとかできないか考えるけど、自力ではもうどうしようもない。もう、治癒することはないのだ。

運良く、心ある従業員によって、そういう雛が餌のところに持ち上げてもらえたら、待っていたように必死で餌を食べ始める。長い間何も食べていなかったので、とてもおなかが空いていたのだ。鶏肉用に急激に太るように品種改良されたブロイラー種は、その分食べたいという欲求も強い。

地面はどんどん汚くなってきた。広い鶏舎のどこか別の場所を探せばもっとましなところもあるかもしれない。でもメイたちはあまり遠くへ移動しない。自分の見知った雛がいる場所にいたい。そして遠くに移動しようにも、メイはあまりもう動きたくなくなっていた。ギュウギュウづめの雛の群れの中を歩くのも、重い自分の体を抱えて歩くのもしんどい。

声を出さずに鳴いている雛も時折いる。それは呼吸器の障害だ。息苦しくて、息をするだけで精いっぱいというように、地面にずっと座り込み、呼吸を繰り返している。

39日齢

体重2190g

鶏舎の中では一羽一羽の個性が問題になることはない。弱って死ねば外に出され、成長の見込みがなければ殺される。かけがえのない尊い命として扱われることはなく、メイたちは「群れ」で管理される。

でも人間がどんなふうに扱おうとも、一羽一羽、私達と同じように個性があって、メイにはメイの好きなものや苦手なものがある。メイにはメイの特別な友達がいて、他の雛には他の雛の特別な友達がいる。

昔、動物には感情や感覚があるという考えは長い間否定されてきた。でもいまは誰もが動物が感受性のある生き物であることを知っているはずだ。でもここではまだ、メイたちは肉を生産する「機械」のような扱いを受ける。そして一羽一羽がその扱いに苦しんでいる。そのような扱いを受けるのはメイたちのせいじゃない。人間社会のシステムのせい、人間の欲望のせいだ。

40日齢

体重2272g

屠殺されるまであと10日。メイたちはそのことを知らない。

あと10日でメイたちは3kg前後になる。今でも十分すぎるくらい過密だが、そのころはどれくらい過密になっているのだろう。

鶏舎に人が入ってくるとメイたちは驚いて逃げる。でもそれ以外の時間はほとんど動かないで過ごすようになった。自分の重すぎる体重を抱えて、毎日生きるだけでいっぱいいっぱいのように見える。汚い地面に触れ続けたメイの足の裏は炎症を起こしている。炎症はメイに痛みを与え、それもメイがもうあまり歩きたくない理由なのかもしれない。

体がどんどんしんどくなっていっても、メイは生きることをあきらめたりはしない。いつか呼吸が楽になるかもしれない、いつか苦痛がなくなるかもしれない、いつか楽しいことがあるかもしれない、そうやっていつも耐え続けている。より良く生きたいという気持ちは、人と変わらない。

41日齢

体重2350g

なぜ苦しいことばかりなのか、なぜこんなにぎゅうぎゅうなのか、どうして砂浴びができないのか、どうしてメイは何もつつけなくて遊ぶことさえできないのか。…わからない。ずっと耐えている。

人が鶏舎に入ってくるたび驚いて逃げる子は、少し歩いただけでハアハア息をする。雛たちのなかには足の裏だけでなく、羽毛の無い腹周りも、座ったときに地面について赤く炎症を起こす子もいた。

横たわったまま立てない雛や体が小さく元気がない雛以外が幸せそうかというと、もはやそんな状態ではない。すべての雛が汚い地面の上で自分の重さに耐えかね苦しんでいた。

42日齢

体重2430g

メイが生まれてから6週間。体重は2430g。急激に太るように品種改良されていない種であれば、体重は6週間で460g。つまり、通常の5倍以上にも急激に大きくなった。

本来の生理機能を超えて成長させられるブロイラー種たちは、この日齢になると、ガニマタでヨタヨタと歩くようになる。太れば太るほど養鶏業者には利益をもたらすが、メイたちにとっては苦しみが増す。

品種改良がもたらした弊害は骨格障害だけではない。

鶏舎の中には急に七転八倒する雛もいる。そうなった雛は翼をばたつかせ、ひっくり返ってもがき続け、首を伸ばしてあえぎ、叫んで、ときに死に至る。

43日齢

体重2507g

メイたちが屠殺される「出荷」まであと1週間をきった。

体重が重くなるにつれて足の悪い雛はいっそう増えてきたように見える。もう2.5kgだ。鶏の祖先はセキショクヤケイと言われているが、そのセキショクヤケイの体重は大人でも1kgにも満たないほどだ。ブロイラー種以外の家畜化された「家禽」とくらべても異様な体重だ。

地面は硬くかたまり、脂粉と糞カスが混じったチリが舞うなかで、自分の体重の重さと足の裏の痛みをかかえて、メイたちはこの先何が起こるのかもわからず、耐えている。

44日齢

体重2580g

こんなに密集した中で1時間でも過ごすのは辛い。しかし雛たちはあと6日、ここで我慢しなければならない。鶏舎の中の状況は悪くなることはあっても良くなることはなく、ますます過密になり地面は糞で汚れ、メイたちの体も汚れていった。重たい体を支える足の裏の炎症は、さらにひどくなっていく。

粉塵とアンモニアがただよう中、メイが見る景色はどこまで行っても同じ。逃げ場はない。雛たちにとって生きることは忍耐を重ねた時間が過ぎること。しかしメイたちがこんなにも耐え続けそれでも生きていることを、壁の外にいる誰一人として気にもとめていない。

45日齢

雛たちにはふたつの選択しかない。

鶏舎の中で苦しんで死ぬか、生き延びて食用として殺されるかだ。どちらにしても50日以上生きることは許されない。鶏舎の中で、呼吸困難、足の障害、体の炎症、痛み、飢え、乾きといった酷い苦しみに襲われる死も悲惨だが、生き延びて屠殺されるのが楽というわけでもない。

たとえば異様な過密。自分の体重が重すぎて生きるだけで精いっぱいな日々。砂浴びもできず薄汚れていく自分に我慢を重ねて、50日間生き抜いたとしても、その先に待つのは乱暴な「捕鳥」作業だ。数万の雛が捕まえられてカゴにつめられる作業の間、雛たちは経験したことのない恐怖と暴力的な扱いにさらされる。それから立ち上がることもできない高さのカゴの中で、手荒い補鳥作業に傷ついて大腿骨が破壊され出血して死ぬ雛がいても、トラックは無情に揺れながらメイたちを屠殺場に運ぶだろう。屠殺場では逆さにつり下げられ、意識もそのままにいきなり首を切断される屠殺場さえもある。さらには生きたままで熱湯につけられる雛さえいる。

結局、この先のメイをどちらの運命が待っていたとしても地獄。「鶏肉」になるために産まれたブロイラーだから仕方ないと言う人がいるが、メイは受け入れられるはずがない。

46日齢

体重2732g

すし詰め状態で詰め込まれた雛たち。一羽でも多くの雛を「鶏肉」を生産しようとする生産性しか考えられておらず、過密であるほど成功したことになる今の日本の養鶏。アニマルウェルフェア以前に、人として最低限考えるべき配慮さえ皆無だ。

太るように品種改良された鶏は、どんなに太っても食べ続けるし、お互いの体で窮屈になっても食べたがる。生きている雛たちは他の雛の間に潜り込むようにして、餌を食べに行った。食べて食べ続けて、そしてますます体重が増え苦しくなった。

一度も入れ替えされない敷料は糞だらけになり、雛の羽根は不潔になるが「鶏肉」にならない部分は汚れても問題ない。皮膚炎(FPD)にかかった足はダシなどに利用されるが、炎症があっても普通に市場に出せるから、雛の痛みなど人は誰も気にしない。

しかし足に残る炎症の跡は、雛たちの苦悩の跡だ。雛たちは「感受性のある生き物」。それなのに「モノ」として扱かわれ、一度も大切にされることなく子どものまま殺される。

47日齢

体重2800g

出荷(屠殺)まであと3日。雛たちはもう限界まで太らされている。

メイには目立った足の障害はない。骨折していないし捩じれてもいないし起立不能になってもいない。歩くこともできる。でも、明らかな障害がなくても、自分の体重をもてあますように、ガニ股でヨタヨタと歩く。そして少し歩くとハアハアと荒い息をして座り込む。どの雛もそうだ。

これがブロイラーの「正常」なのだろう。だが他の鶏と比べると明らかに異常だ。生物学的にも異常だ。

雛にとって嘴は手の役割を果たす重要なものだが、足もそうだ。片足で立って顔についた異物を取り除いたり、体温調整をしたりもする。だがあまりに体重が増えて片足で立つことがままならない雛もいる。鳥類は背中にある尾腺から油をクチバシで掬い取って羽繕いしてグルーミングする。だが体が大きくなりすぎて尾腺にクチバシを届くか届かないかという状態だ。体が重くなりすぎてグルーミングどころか、メイたちは毎日生きるだけで精いっぱいのように見える。

断っておくが、これが一般的な「鶏肉」だ。国内のスーパーで売られる「鶏肉」のほぼ100%は、メイたちのような急激に成長する種であり、メイたちのような飼育方法なのだ。

48日齢

体重2881g

出荷(屠殺)まであと2日。鶏舎の中は白い海に見えるほど過密だ。毎日人が入ってきて死体が取り出される作業があるが、雛に埋もれてすべての死体を取り除くことさえ難しい。殺されるまでの間、死体のそばで過ごさなければならない雛もいるだろう。清潔な場所で過ごしたいというのは、雛だって私たちと同じだろう。だが地面が水漏れでグズグズになってもおらず、死体もない場所をさがしまわるにはもうここは過密すぎた。体重が増えすぎて普通に歩くのさえ息切れがする。雛たちはただじっと耐えている。過密、アンモニアと粉塵の混じった汚れた空気、足の裏の皮膚炎、関節の皮膚炎、のしかかる自分の体重、糞だらけの地面、毎日群れの中に入ってくる人への怯え、楽しいことや気晴らしになることもない。私たちはメイたちがどうなるか知っているが、メイたちは知らない。もし雛たちが将来を予測できたらここから逃げ出そうとするだろう。自分の身を守ろうとするだろう。群れの中に人が入ってきて無理やり脚での押しのけられると、その足に噛みつく雛もいる必死で抵抗しようとする。だが雛にできるのはそれくらいだ。私たちに訴えかける言葉をもたず、自分自身でこの運命をどうすることもできない。

49日齢

体重2953g

雛たちが殺されるまで、残り24時間をきった。雛たちに選択肢はない。この鶏舎から出るのは、死体として、あるはい肉にされるためにのどちらか、だ。

私たちと同じように雛に一羽一羽個性がある。人が鶏舎に入って来ると、少しでも人から距離をおこうと身をすくませる雛もいれば、人をクチバシでつついて身を守る雛もいる。慎重な雛もいれば、大胆な雛もいる。一羽一羽声も違う。性格はもっと違う。しかし養鶏業者はそんなことに興味をもたない。彼らの関心はどれだけ太らせて何パーセント出荷率なのかだ。出荷率とは入雛羽数に対する出荷羽数、つまりは何羽の雛が屠殺まで生き残るかだ。雛は一羽一羽かけがえのない個性にあふれているのに、個性ではなくロットで管理される。それが養鶏業だ。

人が雛をどんなふうに扱おうと、一羽一羽に感受性があり、全身で苦しむ。ある雛は死に臨んで苦しみ、ある雛はじくじくと痛む足の炎症に苦しみ、またある雛はひっくり返ったまま起き上がれずない恐怖と苦痛に苦しむ。さらにある雛は腐敗した死体のそばで過ごす悪夢に苦しみ、ある雛は仲間を失った喪失感に苦しむ。

この鶏舎に幸せな雛など一羽たりともいない。

50日齢

体重3005g

餌が止められた。何か雰囲気が違う。雛たちは不安な夜を迎えた。

真夜中。大勢の人が入ってきて雛たちを捕まえ始めた。あちこちでピーヨピーヨと悲鳴が聞こえる。鶏は30種類くらいの発声を複雑に使い分け、気持ちを表現し、仲間と会話をするが、この声はパニック、恐怖、そして助けを求める声だった。メイは他の雛の恐怖の声を聞いて必死で逃げようとしたけれど、暗い鶏舎の中でどこに逃げればいいのか分からない。出口も分からない。身を隠すところもない。少しでもこの騒ぎから逃れられるよう、メイは隅の壁にぴったりと体をつけ、恐怖が去るのを待った。他の雛たちの悲鳴、人の足音、カゴ同士が当たった時のガチャガチャいう音。カゴがドサっと落とされ、メイは見なくてもその音だけで恐怖に陥った。息をひそめる。しかし人が近づいてきた。もう逃げることはできない。

メイは片羽で持ち上げられた。3kgになった自分の体重が片羽にかかり、メイは悲鳴をあげた。初めて経験する痛みに大きな叫び声をあげながら、狭いかごの中に押し込まれた。

それからトラックに乗せられた。格子のむこうにメイが初めて見る外の景色があった。はじめて見る世界。でもずっと鶏舎に閉じ込められていたメイにとって、道路の騒音、トラックの音はただ恐ろしいだけだった。メイが閉じ込められたカゴは狭く、立ち上がることもできない。一緒に籠の中に入れられた仲間の中にはひっくり返ったまま起き上がれない雛もいた。別の雛は捕鳥作業で足がちぎれてなくなっていた。カゴとカゴを運ぶレールの間に挟まれたのか。

大きな建物にトラックがとまった。建物の中からも雛のピーヨピーヨと叫ぶ声が聞こえる。メイたちにはその意味が分かる。「助けて!」「怖い!」雛たちは助けを求めていた。何が起こるんだろう。不安と恐怖がずっと続いていた。どこかに隠れたかった。でもどこにも隠れるところはなかった。ブロイラーの雛が安全でいられる場所など、この世界にどこにもない。

カゴがトラックから降ろされ、ベルトコンベアで順々に運ばれていった。しばらくするとメイのカゴの蓋が開き、メイは足を持ってつかみだされた。逆さ吊りにされて、メイは泣いた。雛たちはみんな泣いていた。逆さ吊りにされると膨らんだ臓器が圧迫されて苦しく、羽根をばたつかせて起き上がろうとしたが、もうどうにもならない。

もがき続けて数十秒後、メイは殺された。

補足説明

未熟雛

ブロイラーの孵化場では売り物にならない雛は殺処分されます。未熟な雛は殺処分対象になり、本来なら農場に行くことはありません。しかし、一日に産まれる雛は数万羽にものぼるので、選別時に見逃されてしまい、あやまって農場に連れていかれることがあります。いずれにしても、未熟な雛は鶏舎の中で自力で生き延びることはできず、死に至ります。

治療

養鶏の場合、鶏が病気になったり足を骨折したりしても、一羽一羽に治療されることはありません。一羽当たりの単価が安い鶏(ブロイラ―の場合500円程度)を一羽ごとに治療していては赤字になってしまうためです。経費が利益を越えてしまうことが許されないのは、生き物を扱う産業であっても変わりません。

なにか自然には起こり得ないような怪我をした雛を目にします。従業員が何らかの作業を行う際に、逃げ遅れ怪我をしたものと思われ、血を流していることもあります。このような場合も治療はされません。

品種改良

肉用の鶏として最も一般的なブロイラー種は、生理機能の限界まで、短期間で体重を極限まで増やす「品種改良」が行われてきた種です。その結果、病気になりやすく、死亡率はブロイラー種ではない鶏とくらべると7倍。先天異常も増えているという研究結果もあります。

アニマルウェルフェアという書籍を執筆した”Webster(1995)は養鶏産業における疼痛こそ「感覚を持つ他種に対する人間の非人道性を表す代表的なものであり、最もひどいものだ」と述べている。重量種の血統のニワトリの場合、と畜されるまでに脚の虚弱化と運動障害の発生が25%になることから(Kestin et al..1992)、Websterは「およそ1/4の肥満系ブロイラーと七面鳥は生涯の1/3の期間、慢性的疼痛にさらされている」と述べている” 「動物への配慮の科学」 2009 P83より引用

ブロイラー鶏たちは、骨格構造が成熟するよりも速いスピードで体重が増加します。そのため、腰や膝の関節骨格が体を支えることができなくなり、脚弱、さらには歩行困難に陥ることが珍しくありません。

ブロイラー種は、異常な体重増加に心肺機能が追いつかなくなり腹水がたまり死に至ることもあれば、急激な増体で心臓に負担がかかり心不全で突然死することが知られています。国内ブロイラーの食鳥検査における腹水症による全廃棄率は、2006年から2014年にかけて2.5倍に増加しています。「突然死(SDS)」も腹水症と類似した機序でおこる代謝異常です。突然死もまたブロイラーの集中飼育では一般的な病気で、成長の早いブロイラーでは発生率が通常1%-4%(0.5-9.62%とも言われる)。成長率を低下させると突然死の発生率はかなり低くなるといわれています。

死んだ雛の処分

養鶏業では、鶏の死体は焼却されたり、レンダリング業者に引き取られ、肥料などにリサイクルされたりします。

殺処分

出荷(屠殺)までに必要な体重に達する見込みのない雛は、生かしておいても餌が無駄になってしまうため、殺処分されます。殺処分は、首をひねる、床にたたきつけるなどの方法で行われています。

アニマルウェルフェアの観点から言うと、弱った雛は早急に殺処分することが求められます。しかし現在農場内で安楽に雛を殺す方法は、国内では導入されていません。さらにたとえ福祉的な殺処分方法を導入したとしても、従業員1人あたり数万の雛を管理するのが今の養鶏業です。弱った雛をすべて見つけ出すことは物理的に不可能な状況で、多くの雛が長期にわたる苦しみを味わったのちに死んでいます。

現在の農場内で一般的とされる方法は首の骨を外す頸椎脱臼です。しかし頸椎脱臼は、意識の即時の喪失をもたらさないという重要な証拠があります。公開された研究によれば、頚椎脱臼された鳥のうち、効果的に行うことができたのは10%だけでした。つまり、頚椎脱臼の後に脳活動が継続するリスクが常に存在します。https://www.hopeforanimals.org/broiler/neck-dislocation/

鶏舎の温度

幼齢のときは28度ほどが適切な温度ですが、夏場の鶏舎でこの温度を保つことは困難です。熱死することもあります。養鶏業における暑熱での死亡は一般的です。2019年7-9月の間、全国で、暑熱が原因で「肉用鶏」が20万9千羽、「採卵鶏」が47万死亡(あるいは暑熱生産性が落ちたという理由で殺処分)しています。メイがいるのは、窓がなく換気扇で外気を取り入れるウィンドウレス鶏舎。気温の調整がしやすいと言われますが、実際には35度を超えることもあります。一般的に鶏舎の中にはエアコンはなく、換気扇で温度管理が行われます。夏場に鶏舎に入って作業する人は一瞬で汗まみれになるほどです。人は鶏舎から出ることができますが、雛にはできません。夏場には一度に数百、数千羽も熱死することもあります。

骨格異常

跛行(はこう)や歩行困難、足のねじれ、脛骨形成不全症、脊椎すべり症などによる「脚弱(きゃくじゃく)」は、ブロイラーでは一般的な疾患です。脚弱の割合についてはさまざまな報告があります。一般的なブロイラー種の14%~50%が脚弱というデータや、脛骨形成不全症が24.22%で観察されたというものや、40.8%に明確な歩行異常が認められたというものなどがあります。

脊椎すべり(骨の異常)

脊椎すべりとは、脊椎骨の変形やずれにより、脊髄圧迫と後部麻痺を引き起こします。ブロイラーの品種改良が要因です。足関節で体を支え、お座りのような姿勢をとったまま歩行困難、または歩行不能となり、翼で移動しようとします。

痛み

鶏は痛みを感じないという虚説をいまだ信じている人もいるかもしれません。しかし、ブロイラーに顕著な脚弱は、彼らに痛みを与え、苦しめています。研究では、足の不自由なブロイラーは、鎮痛剤が含まれた食べ物を好むことや、足の不自由なブロイラーがに鎮痛剤を投与すると活動が活発になることが示されています。

集約的畜産

メイのいる鶏舎では奥行きが100m近くあり数万羽の雛が収容されています。本来30羽以下程度の群で暮らす鶏にとって、この巨大なシステムは快適なものとはいえません。工場型養鶏の拡大により、1964年に日本全国で飼育されていた「肉用鶏」は1,317万羽。それがいまは1億3,800万羽。一戸当たりの飼養羽数は624羽から61,434羽へと増加しています。

羽毛

毛が抜けている雛がいますが、これは雛の羽毛から鶏の羽に変わる換羽です。1-6週齢にかけて白い羽根に変わります。換羽の時期は採卵鶏の雛などと同じです。

ブロイラー種の雛は腹周りに羽毛がほぼありません。全体的にブロイラー種以外の鶏とは違い、地肌が見えている部分が多いです。これには「品種改良」、や栄養条件、敷料の状態などの環境条件などが考えられています。本来羽毛で守られるはずの肌がむき出しとなるため、損傷のリスクがあり、感染症にもかかりやすくなります。

過密

数万羽の雛が収容される鶏舎の中は広く、場所によって過密具合が異なります。しかし出荷前にはほとんどどの場所も足の踏み場もないほどになります。日本における出荷時の平均飼育密度は1平方メートルあたり16羽(体重2.9kgで換算)。この平均飼育密度には地鶏も含まれており、ブロイラーの一般的な平均飼育密度は1平方メートルあたり18羽と非常に高いものとなっています。

鶏舎の照明

日本のブロイラー養鶏では約半分で照明管理が行われています。一般的なブロイラー種であるチャンキーを育種するアビアジェン社は、そのハンドブック( Ross-BroilerHandbook2018-EN.pdf )のなかで入雛-7日齢までは30-40ルクス、それ以降は5-10ルクス程度を推奨しています。

10ルクスとはテーブルの上に火のついたロウソクを立てて、そこから20センチほど離れた場所の照度くらいで、大変暗いものです。 

5-10ルクスのような低い照度を設定する理由は「あまり動かさずに太らせる」、つまり低照度のほうが飼料効率が良いという考えに基づくものです。あまり動かさないことで肉への傷やあざを防ぐことができると考える人もいるかもしれません。しかしこういった考えを裏付ける科学的根拠は見当たりません。

敷料(床)
一般的にブロイラー養鶏では雛を出荷(屠殺)するまで、床に敷かれたノコクズなどの敷料の交換は行われません。そのため日齢がたつにつれて敷料は糞を吸収し、汚れていきます。それに伴い鶏舎の空気もしだいに悪化していきます。
足の裏の炎症

日本におけるブロイラーの足裏の炎症=趾蹠皮膚炎(FPD)の発生状況調査によると、「FPDは調査した全ての鶏群で観察され、一部の鶏群では全ての個体にFPDを認めた」など広範囲にわたり、高率にFPDが発生していると報告されています(「わが国のブロイラー鶏における祉蹴皮膚炎の発生実態に関する研究」橋本信一郎2011 )。FPDの発生要因には、床状態の悪さ、飼育密度の高さ、そして短期間で急成長させた品種改良も原因です。2020年のレポートでは、急激な成長をするブロイラー種はゆっくり成長するブロイラーよりもFPD率が高いことが分かっています(急激な成長をするブロイラーが8割程度であるのに対してゆっくり成長するブロイラーは4割程度)。ベターチキンのようなゆっくり成長する鶏であってもFPDをゼロにすることはできませんが、それでも半減させることが可能です。https://www.hopeforanimals.org/broiler/551/

鶏舎の空気と臭気

鶏舎の中の空気は良いとはいえません。糞を吸ったオガクズは、雛が出荷されるまでそのままで、アンモニア臭が鼻をつくこともあるし、鶏の羽毛や細かい脂粉が全体に始終舞っています。鳥類は気嚢を持ち、他の動物に比べて酸素要求率が高い生き物です。鶏舎の空気は鶏が健康でいられる空気とはいえません。

鶏舎の中のアンモニアレベルについてはさまざまな動物福祉基準があります。25ppmというものが多いですが、20ppmというものがあります。どんな福祉基準であっても0ppmという基準を設けているところはありません。不可能だからです。しかし私たち人間が普通に暮らすときのアンモニアレベルは0ppmです。それなのに肺の10倍もの大きさの気嚢を持ち、たくさんの空気を必要とする鶏は20ppmまで問題なしとされてしまっています。

屠殺

世界中で660億以上の鶏が肉のために殺されています。国内では毎年約6億9千万羽の肉用鶏が殺されています。そこに1億の採卵鶏の廃鶏が追加されています。また、日本は屠殺している鶏のおよそ倍の量の鶏肉をブラジルやタイなどから輸入しています。

屠殺方法:日本では気絶処理(スタニング)なしで屠殺されることは珍しくありません。これはヨーロッパでは禁止されているやり方です。咽頭が切られた動物がまだ意識している間に、動物が不安、痛み、苦痛および他の苦しみを感じることができるので、 スタニング無しの首の切断は深刻な福祉問題 が起こりやすいと言われています。https://www.hopeforanimals.org/slaughter/517/

日本では生きたままで熱湯で茹でられる雛すらいます。https://www.hopeforanimals.org/broiler/red-skin-chicken-2018-broiler/ 

代替肉への移行

代替肉への移行は投資機関の関心事項でもあります。2197兆円(20.1兆ドル)もの投資機関ネットワークであるFAIRRは畜産の抱えるリスクを啓発し、投資意志決定のプロセスに畜産のリスクを組み込むよう、投資機関に促しています。FAIRRは世界の畜産企業のリスク分析を行い、その結果を投資家たちに公開し、投資リスクのある企業かどうかの情報を提供しています。リスク分析の評価項目の一つに「地球温暖化ガス」「森林破壊と生物多様性喪失」「アニマルウェルフェア」と並んで、「動物性タンパク質を減らし、持続可能なタンパク質へ移行する取り組みを行っているか」というものが含まれます。https://www.hopeforanimals.org/environment/fairr/

鶏肉産業は環境負荷が高い産業です。世界中で毎年殺される数百億もの鶏に餌を与えるための大豆を生産するために、大規模での森林が伐採されに、気候変動を加速し、野生生物を絶滅に追いやっています。世界の大豆の75%は飼料になっています。

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